指折り数えてみると、もう9回目になる。琵琶湖9周。だもんで、
「余裕ぅ~♪」 って感じで、前日に閃いたように「明日!」と決め、特に準備をする訳でもなく、ものすごいのんきに出発したんである。思えばこれが悪夢のはじまり。 (どういうわけか僕の琵琶湖一周は右回り。ふつうの人は左に回るんだけど、惰性でずーっと右に回ってる) 〔5:30〕京都/左京区 のんきなのはいいが、寝坊した。出発も30分ほど遅れたぞ。ま、大丈夫っしょ。がしかし、今朝は寒いなぁ~。蹴上から山科へと抜ける三条通に計測器がある。気温4℃、凍結、注意…ってさ。花冷え?指出しグローブじゃ手が寒くて寒くてたまらん! 〔7:08〕志賀町和邇らへん 大津に入って湖西路を北上するうちに身体はだいぶ温まった。しかし琵琶湖大橋から北らへんのR161は最悪。2車線歩道なしで、トラックもガンガン。で、その顛末は… ぉおぉぉぉおを!事故ってる!トラックが路肩からはみ出してる! …一歩間違えば地獄行の道だぜ、小野~蓬莱のR161。 〔8:30〕高島市高島町 いつのまにか高島市って市ができた。旧高島町の入口には「乙女が池」なる内湖があって釣人で賑わっている訳だが、この内湖は『大溝城』の天然の濠だった訳である。今まではピューっと通過してた場所だけど、今日は立ち寄って石垣などをシゲシゲと眺めてたりした。やっぱり城はええのぉ。 〔9:44〕高島市今津町 僕の琵琶湖一周の定番の休憩場所が「今津浜」。海津大崎・葛籠尾崎・竹生島を眺められるビュースポット。調子のいいときはここまでノンストップなんてこともあったけど、今回はいろいろ自転車を止めて写真を撮ったり、城やら浜やら風車村やらでやたら休憩を取りすぎたぞ。 〔10:20〕高島市マキノ町/海津大崎 ここも高島市なのかよ!…広い市だなぁ。平成の大合併恐るべし! それはともかく、海津大崎といえば桜、桜といえば海津大崎である。例年湖南の大津市あたりで満開だと、海津ではまだつぼみ…って感じなんだけど、今年は「大津で満開・海津大崎も7分咲き」だった。天候不順恐るべし! 深いブルーの湖面に映える桜はとってもきれいなんだけど、人とクルマが多すぎ。平日なので通行規制もしてないし。ことごとく脇見運転だし。…日本人の物見遊山精神恐るべし! 〔11:30〕西浅井町菅浦 琵琶湖一周っていっても、琵琶湖の周囲を回るだけ…という訳にもいかない。ルートもいくつかの選択肢がある。その最も大きなものが「葛籠尾崎を回るか?回らないでショートカットするか?」 もちろん、葛籠尾崎を回らないと正確に一周とは言えない。その分、距離的・時間的・体力的なリスクも多い。がしかし、「大丈夫~大丈夫♪」とのんきなこの日の僕は、迷わず葛籠尾崎…奧琵琶湖パークウェイ方面へ。その付け根にある菅浦という港町はお気に入りの町並み。遥かな昔より、人々は漁業に従事し船を足にして生活してきた。そこにはゆったりとした時間が流れる。まさに陸の孤島。いいなぁ。滋賀県は歴史の魅力にあふれてる。 〔12:30〕西浅井町/葛籠尾崎 菅浦でのんびりしすぎた。もう12時だ。いよいよ、最大の難関・奥琵琶湖パークウェイへ。…しかし、どうも上り坂で力が出ない。ギア最軽状態でのんびり、のんびりと漕ぎ進む。パークウェイの路肩にはず――っと桜が植えられてるから、振り向いて見ると眼下にピンク色の道筋が見える。ときどき止まってまた写真を撮る。おまえは林家ぺーか!おかげでほとんど疲れることなく、汗をかくこともなく、水を飲むこともなく展望台に辿り着いた。…うわぁ、ここも物見遊山のご年配ばっかじゃん。いいなぁご年配は。 湖北を眼下に望みながら、またあらぬことを思いつく。「あの高い山が伊吹山やろ…と、するとその前にある山が…」地図を片手に景色を眺めるのって相当面白い。そして、「あの景色の、あの山まで行こう!」と軽い気持ちで思った。「なぁに、ちょっと寄り道するだけさ」って感じで。伊吹山の手前に見えるあの山まで。 〔13:15〕西浅井町/塩津港 塩津=琵琶湖の最北端である。幾本かの小さな川が注ぎ、小さな集落が息づく。急激なアップダウンを繰り返した挙げ句、月出峠からはじまるジェットコースター・ダウンヒルでこの里まで一気に駆け下りるのだ。琵琶湖一周するときに、一番気持ちいい瞬間。…それにしても、ちょっと時間が押してるんじゃないか?13時っていや、いつもなら長浜城あたりにいるはずじゃ…。大丈夫か? 〔14:30〕湖北町/小谷城 過去8回の琵琶湖一周では必ず 木之本町→余呉川沿い→山本山トンネル→湖北町尾上→湖岸道路 というルートを通ってきた。しかし今回は途中、高月町で東に折れる。東へ、東へ。北陸自動車道を越えた。めざすのは「あの山」。…しかし、湖北の景色はホントに長閑。小さな川沿いには桜がきれいに咲いてて思わずペダルを止めてしまう。そんなのんびり走行のままついに「あの山」に到着。何の変哲もない山だけど、そう、ここはあの小谷城跡なのだ。山を見上げる。しばらく430年前に思いを馳せる。嗚呼、なんてロマンティック! …しかし腹減った。お、小谷城の目の前にファミマが!ここで買い食い。補食のじゃがりこは葛籠尾崎で食っちまったからなぁ。パンとおにぎりを食す。さてと、そろそろ行きますか…。今何時?え?14時45分?あれ?? 〔15:10〕浅井町/姉川古戦場 今日の目的は何ですか?自転車に乗ること?それとも史跡めぐり?観光??自問自答しながらも、桜満開の堤に「姉川古戦場」の看板を見たときの感動といったら!もう、どうでもいいや。だってここで浅井の赤尾清綱・海北綱親・雨森弥兵衛・磯野員昌なんていう勇将たちが戦ったんだぞ。織田軍が11段まで崩されたんだぞ。一方の朝倉勢を徳川勢が撃破して、側面から織田軍をの危機を救う…。うひょー!そんな戦いがここで、この場所で!身が震えてくるような感動。はるばる大回りしてきたかいがあったってもんだ。 〔15:30〕長浜市/長浜城下 姉川を後にしたころから、「さすがにヤバいかも」と思った。ハッキリ言って時間を食いすぎてる。15時半っつーと、彦根でカレー食ってる時間だろ。まだ長浜市郊外の田んぼの中をウロウロしてる。ようやく長浜の市街地に入る。適当に勘で入った道路がやがて見覚えのある北国街道~黒壁スクエアになった。いい町だなぁ…でももう時間がない、急がなきゃ! 〔16:20〕彦根市/彦根城 長浜まで150kmを走りながら、特に疲労もなく、汗もかかず、膝も痛まず。…つまりそれだけ楽なサイクリングをしてきたって証拠。150kmかけてアップ(準備運動)してたようなもんだ。ハッキリ言って身体にまったくキレがなかった。平地で速度がでなかった。そういう意味では最悪。もちろん、ところどころで自転車を止めて、花を愛でたり景色を眺めてたりしたせいもあるけど。とにかく、ようやくエンジンがかかった。長浜駅~彦根城は13kmある。それを実に25分で漕ぎ切った。まるで別人のように、何かが取り憑いたかのように漕ぎに漕いで漕ぎまくった。「ひ、彦根城!ああ、彦根城!」 遠く彦根城が見えたときの感動といったら、もう! 〔16:45〕まだ彦根城 桜の彦根城。最強。すっげー美人が超かわいい服を着てるようなもん。あかん。もう時間とかどうでもいい。このBeautiflなViewをもっと楽しませてくれぇ!もう城のまわりぐるぐる回って、写真撮りまくって、長屋門の石垣の上に登ったり…とか。桜は満開。花見の宴も真っ盛り。いいなぁ、いいなぁ。……しかし、もう17時が近い。えっ?17時?彦根で17時?マジかよ? がしかし、「彦根のココイチでカツカレー」は琵琶湖一周の定番&お楽しみだ。ここらで激辛パワーを補充するのだ。ええい!もう夕方だが寄るのだ。…やっぱりうまい。疲れた身体には激辛がいい。店を出た時点で17:30なのだが、ホントに大丈夫か? 〔18:00〕能登川町栗見新田 自転車を漕ぐとき、両腕をハンドルに突っ張るようにすると楽なんである。しかし、それではスピードは出ない。上体が起きた状態で、体重もうまくペダルに伝わらない。肘をすこし曲げてやると、上体は自然と前のめりになる。当然重力はペダルへとかかり、速度は増すが、支える腕に負担がかかりはじめる…。 ここにきてようやく「自転車漕ぎ」としてのフォームが戻ってきた。電車通勤のため毎日自転車に乗れなくなってから2年。すっかり「楽乗りスタイル」になってしまっていた。それにベストの体重から5kgは重くなってしまってる。あかん!俺、あかん!…そんな危機感は一途にペダルへのストロークとなった。そう、自転車とは「ただペダルを漕ぐ」だけのものではなかったのだ。体重移動のために上体を使い、肩を揺らすような気持ちで右・左…と力を込める。汗が出る。息が上がる。太ももの乳酸値が高まってるのをヒシヒシと感じる。まさに本気モード。彦根の芹川河口付近から能登川町の栗見新田まで13kmを約30分。この間向かい風であったことを考えれば、自分的には「驚異的」。がしかし、もうすぐ西陽は対岸へと落ちてゆく。 〔18:30〕近江八幡市/長命寺 いつもの琵琶湖一周ならば、陽が暮れるのは瀬田のあたり。一度だけ守山で日没のときがあった。今回は、彦根の段階で2時間遅れ。その後やや挽回したものの、日没は止められない。近江八幡の休暇村付近で日没を迎えることになった。おかげで沖島の夕暮れは美しかった。しかし、ここは琵琶湖に付き出した長命寺山のアップダウンのある道。それでももうヘバらない。アニマル浜口ばりに「気合だぁ~!」と吠えながら進む。夜道で出会ったら絶対恐いと思う。 〔20:00〕守山市/琵琶湖大橋 200kmを越えても体力に不安はない。身体のキレも戻ってきた。気力も充溢してきた。…がしかし、不幸なことに夜になった。夜はダメだ。ハッキリ言ってスピードを出せない。いかに光というものが大切なのかを痛感する。路面の状況をがまったくわからない状態だと、さすがに怖い。おまけに対向車が容赦なくハイビームを浴びせるため、一瞬、目眩ましにあったような闇をマトモにうけなければならない。悪いことに湖岸道路には街灯がない。さらに歩道は「自転車通行可」と書かれた突起物が所々に付き出してる。気温もまた下がりはじめた。この状況はまさに「極悪非道」。ここまでくるともう精神力しかない。「ええい、気合だぁ~!」 〔21:10〕京都市山科区 いつもの琵琶湖一周なら、彦根でカレーを食ってから京都の家に戻るまで約5時間である。そのペースで行くと、帰宅時間は夜10時半。うそん!…みたいな焦りもあって、エンジン全開のまま、闇夜の草津を越え、大津市へ。近江大橋を越えてロイヤルオークホテルのあたりからようやく街灯が戻ってきた。ああ、明るいって走りやすい(涙)。瀬田の唐橋を渡ると、もう百回以上往復した「知り尽くした道」。さぁ!もう後少し。いつもなら琵琶湖一周後の逢坂越えはかなりキツいのだが、今回は一気に駈け登った。彦根から山科まで3時間半。夜闇にも向かい風にも負けず、よくやった!感動した! 〔21:30〕京都市中京区/帰宅 ということで、彦根から4時間で帰還。最後はもうヘロヘロ。 楽しかった…というより、とにかく反省点ばかりが頭に浮かんできた。 ●まずは「自転車で200km超の旅をする」ということを前提にせよ ●観光はほどほどに。特にデジカメ。 ●計画をおろそかにするな。特に休憩の取り方とペース配分。 ●夜間のロングドライブは避ける。 9回目の琵琶湖一周は、無意味に疲れた。それもこれも、すべて自分のせい。「もう何度もやってるから、大丈夫」って油断が無謀なペースにつながった。休憩しすぎると、体力的には楽だけど、気力がめっちゃ落ちると身にしみた。多少身体が悲鳴を上げても精神力優先でガンガン攻めた方がいい。 とりあえず、散々寄り道したおかげでこの日走った距離は257.4kmで過去最高。城を見ると繋ぎ縄の解けた犬のように走ってしまうからなぁ…俺。ホント、城好きも困ったもんだ。 犬。大浦にいた犬。 猿。奥琵琶湖パークウェイの猿。
by unbridledblue
| 2005-04-16 13:01
| 自転車雑感
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