実はわたくし、大学の卒論のテーマとして『関ヶ原の合戦』を取り上げたんです。文学部史学科でもなく、社会学部なのに…。ゼミの教授からは「聞いたことがない」とバッサリ切り捨てられ、ひとり孤独に歴史社会学というジャンルに挑んだのですが…。 そんなわたくしが、約20年ぷりに関ヶ原を訪れた! 当時(20年前・小学校高学年)は、両親に連れられて『関ヶ原ウォーランド』なぞに連れていかれたんですが…。あんなの関ヶ原じゃない。ただの箱庭だよ。武田信玄の亡霊とかいたし。子どもながらにそう思った。 そんなこんなで「ぜひ一度本当の関ヶ原を!」と思いつつ、いつも東海道本線関ヶ原駅を通過してきてしまった…。そして…ついに、本当の関ヶ原へ!いざ、出陣! わが愛車2号・DAHONと関ヶ原駅前の案内板。 関ヶ原合戦・オリジナル布陣図 赤字=東軍、青字=西軍、紫字=東軍に寝返り・内通 協力:GoogleMaps ■本多忠勝陣所跡 本多忠勝の陣所はふつーの住宅の庭にある。住民がいたのでかなり気まずかった…。徳川家随一の猛将・本多忠勝も関ヶ原ではあんまり活躍せず。その理由は… ■福島正則陣所跡 本多忠勝が実際の戦闘で目立たなかったのは、「関ヶ原は福島正則のひとり舞台」だったから。正則はいろんな意味で関ヶ原の主役だった。実際にこの場所に立ってみると、陣地としてはあんまりいい場所じゃない。大きな道路のそばだし、平地だし、守勢に回ったときに支える地形もない。だが、逆にそれは「俺は前にしかいかない!」と雄弁に語ってるようだ。 ■不破の関 関ヶ原を貫通する「旧中仙道」は実にいい雰囲気である。おそらく、道幅も江戸時代当時のままだろうし、ゆるやかな曲線は古街道の風格を思わせる。街道沿いの民家も実に古い。そして街道を西に進めば、「不破の関」がある。ここから先、街道は窪地を下って、また登るというわけのわからんルートを通り、鶯の滝を経て近江の国へと至る。 ■黒血川から山登り 黒血川っていう不気味な名前の川があって、…これは関ヶ原の合戦じゃなくて、壬申の乱からの名前らしいのだが…それはともかく、その川沿いから大谷吉継の墓を目指す。ところが、これがえらい山の中!途中から道が荒れてきて、自転車担いで歩くハメに。暑いし、何か薄暗いし、おまけに雑草伸び放題。常に周囲からガサゴソと虫たちの羽音が聞こえる。虫嫌いの僕にとって、相当怖い体験。もう汗だく。 ■ということで、大谷吉継の墓 ぐはぁ~。ようやく山の中の吉継の墓に到着。疲れたぁ。 大谷吉継は西軍に属しながらも、敵方・東軍の諸将からも憎まれることがなかったそうな。こうして墓所が保存されたのもそのせいか?蝉の鳴き声がけたたましい森の中に、吉継と従者・湯浅五助の墓がひっそりと並んでいる。吉継はわずかな兵で裏切った小早川秀秋の大軍をマトモに食い止め、やがて自刃する。主の首を抱えて、湯浅五助が隠し埋めた場所…ってのがここなのね。五助よ、何もこんな山の中まで来なくても…。 ■平塚為広陣所跡 山を降りると、平塚為広の陣所がある。平塚為広。このマイナーな武将を知っている人が何人いるだろうか?関ヶ原の一連の流れの中で、この平塚為広と大谷吉継の二人は、実に進退がさわやかである。しかし、ここも誰も訪れそうにない場所。ここからは、松尾山が目の前に見える。彼らが「ある覚悟」を秘めて戦場に出たことがよくわかるよ…。 ■ダム越え? 平塚陣跡から宇喜多陣跡のある天満山へと行きたいのだが、その間に藤古川の流れがあって、さらには途中に小さなダムまである。ダムか…。ダムの堰の上を橋がわりに越えられるんだけど、おそろしい勾配の階段が自転車の行く手を阻む。自転車担いで、カニのようにのそのそと横歩きして何とか通過する。難所だらけのルート選んだみたい。 ■宇喜多秀家陣所跡 関ヶ原の合戦における西軍の主力は、宇喜多秀家隊だった。兵数も最大だったし、士気も高く、実際・福島正則隊や井伊直政隊など複数の相手を退けたりしている。宇喜多秀家は、政治的駆け引きや愛憎とは別の次元でこの戦いに参加した。若き秀家は純粋に豊臣家のことを愛していた。その点、同年代で秀吉の親類ながらもグラグラと揺れ動いた小早川秀秋との対照的だ。真っ青に染め抜かれた宇喜多の陣旗がやけに爽やかに見えた。 ■開戦地・小西行長陣所跡 宇喜多陣地の天満山から、また山の中を少し越える。バッタやらセミやらから襲撃を受け、「顔面・虫アタック」に閉口。まさに悲鳴もの。 ようやく平地に出ると、公園があり、そこが「関ヶ原合戦開戦地」。抜け駆け気味にやってきた井伊隊とそれを追った福島隊が、宇喜多隊と衝突した場所だ。すぐ北には小西行長の陣所がある。商人出身の小西は「軟弱者」の烙印が押されがちだが、どうしてどうして、関ヶ原での働きぶりは見事だったんだそうな。宇喜多・小西だけで東軍の主力半分と戦ってたようなもんだからね…。 ■島津義弘陣所跡 いろんな意味で、「関ヶ原のストレンジャー」だった島津氏の陣所跡。やや高台にある。ここでひたすらに沈黙していた。三成自らが馬を飛ばして出撃要請をしたそうだが、三成の陣所からは思ってたよりも遠いよ。最後の最後に見せた「敵中突破」。この陣所から重い腰を上げたのはもう戦いが終わった…と誰もが思ったときだった。 ■笹尾山・石田三成陣所跡 笹尾山に登ってみると、三成がいかにいい場所を陣取っていたのかがわかる。さほど高い山ではないが、眼下に戦場がよく見渡せる。この場所が最も「関ヶ原」を感じられるのではなかろうか?笹尾山の麓には木柵などが設けてあり、はためく旗とも相まって、関ヶ原では唯一「当時の雰囲気を連想できる」場所になっている。この場所では、昔佐和山城を見たときと同じ感想を持った。 「三成と島左近は、本気で天下を相手にまわして喧嘩しようとしたんか…」 ■陣場野・家康最後本陣 関ヶ原を自転車で走り回ってると、図面で見るよりも広い気もするし、狭い気もする。正直、掴めない。掴めないのは想像以上に西軍の陣地が丘陵地にあったためで、地形も結構起伏があった。がしかし、東軍諸将の陣地はことごとく平地にある。最後、家康はこのあたりまで陣を進め、首実検まで行ったそうな。以降、地名も陣場野となったそうな。 ■東首塚・井伊直政陣所跡 ものすごくこぢんまりとした町の中心部まで戻ってくると、駅のすぐ北側に「東首塚」がある。合戦後、西軍の敗兵の首を埋め、供養した場所。とりあえず、木が大きい。人の生き血を吸うと、植物の成長は早いんかな(嘘)?そのすぐそばには赤備・井伊直政の陣所と秀忠の弟・松平忠吉の陣所の碑がある。徳川家で実際に戦闘した主力兵は、このあたりに駐屯していたってことやね。 ■桃配山・徳川家康陣所跡 関ヶ原をうろうろすること2時間半。正直、かなり疲れた。移動距離は大したことないんだけど、暑さ+山道+虫による精神的疲労。やっぱ山歩きするのに夏は不向き。ということで、家康が本陣を布いた桃配山はスルーした。「ああ、ここに陣を布いてたんやね」って感じ。405年前が嘘のように鄙びた関ヶ原にさよならを告げ、そのまま国道を大垣方面に疾走。西軍が本拠にしてた大垣城と、東軍が一時本拠にしてた岐阜城を訪れるのだ! ■大垣への道 何を血迷ったんだろう、俺? 関ヶ原から大垣まで自転車で移動しながら、思った。ろくに下調べもしてないし、地図も持ってないので殺風景な国道をただただ走るのみ。わかったのは、大垣―関ヶ原の距離感くらいかな?でも関ヶ原まで行軍した西軍のルートはこの道じゃなくて、伊勢街道~牧田の方なんだよな…。何やってんだろ?俺。写真は途中の「大垣ひまわりランド」にて。 ■大垣城、…勘弁してください 大垣市街に入ったが、雲行きがかなり怪しい。う~ん、もう降るのは時間の問題だな。大垣城を探すが、平城のため、遠くからは見つからない。ようやくにして見つけたのだが…。 おい!なめとんか! いや、酷い酷いとは聞いてたけど、この城は酷すぎ。建物がアレなのはともかく、石垣なんてちょっとした豪邸の積み方じゃねーか!城としての誇りはないのか!曲輪もわかりにくいし、これじゃドラマ用のセットってのがいいところ。島津義弘と石田三成が激論を戦わせた城がこれか…。悲しいなぁ。と思ってたら降ってきたよ、雨。 逃げるように大垣駅に駆け込み、自転車畳んだ瞬間に猛烈な雨になった。 天気予報のうそつき。 岐阜城は無理かなぁ…。せめて桶狭間方面は晴れててほしいなぁ~。 …桶狭間編につづく…
by unbridledblue
| 2005-08-14 19:11
| 旅の雑感
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